薬学部では6年間にわたり、薬のしくみや病気の知識、患者さんへの対応など、医療の現場で活かせる幅広いスキルを学びます。「実際にどんな授業を受けるの?」「将来どんな仕事につながるの?」と疑問を持つ高校生の皆さんへ、薬学部の学年ごとの学びと、それぞれのステージで大切にしたいポイントをわかりやすく紹介します。
1年生
薬学の基礎をしっかり学んで「なぜ学ぶのか」を考える 薬学部1年生では、高校でも学んだ化学・生物・解剖学などの基礎科目を大学レベルで深めます。「今は地味な内容かも…」と感じるかもしれませんが、この基礎が将来の専門的な学びの土台になります。
たとえば、薬の成分や体内での動きは化学や生物の知識がなければ理解できません。今学んでいることが、将来の新薬開発や病気の治療にどうつながるかを知ると、学ぶ意味が実感できます。
さらに、AI創薬やmRNAワクチンといった話題から、「薬学はこんなふうに未来を変えているんだ!」と感じることもできます。大学に入って初めての実験やレポートに不安を感じるかもしれませんが、先輩や先生に相談すれば安心です。
2年生
専門的な学びがスタート!薬と社会のつながりを知ろう 2年生になると、「薬理学(薬の働き)」「微生物学(病原体のしくみ)」「薬剤学(薬の使い方)」などの専門科目が始まります。内容が高度になりますが、同時に「薬が社会でどのように使われているか」を実感する機会も増えてきます。
例えば、がん治療の最前線や薬の効かない耐性菌の問題など、医療ニュースと自分の学びがつながってくるのを感じられるようになります。「今、世界で何が起きているのか」を意識することがモチベーションになります。
大学外の講演会や市民公開イベントにも参加して、専門家や現場の薬剤師の話を聞いてみましょう。将来の進路を考えるヒントになりますし、「薬の勉強って面白い!」という発見にもつながります。
3年生
病気と薬の深い関係を学び、興味ある分野を見つける 3年生では、「病態学(病気のしくみ)」「薬物治療学(病気に応じた薬の選び方)」など、医療の現場に近い内容を学びます。教科書だけでなく、実際の治療で使われる薬の知識が増えていきます。
糖尿病や認知症などの病気と、それに使われる薬の新しい開発情報を通じて、現実の医療と自分の学びが強く結びついてくるのを感じられるでしょう。
また、「卒業研究」に向けて、自分の興味のある分野を見つける時期でもあります。がんの薬を研究したい、感染症対策に関わりたいなど、将来のビジョンが少しずつ明確になってくるはずです。
研究は難しそうに感じるかもしれませんが、学会や最新の医療トピックにふれることで、「自分もやってみたい」と思えるようになります。
4年生
重要な試験と研究・実習の準備に取り組もう 4年生では、「CBT(知識試験)」と「OSCE(実技試験)」という、5年生の実習へ進むために必要な試験を受けます。どちらも合格率は高いものの、範囲が広く、しっかりした準備が必要です。
過去問を活用したり、仲間と一緒に練習することで効率的に勉強できます。勉強の方法は人それぞれですが、自分に合ったやり方を早めに見つけておくと安心です。
同時に、卒業研究もスタートします。プレゼンテーションやデータ整理など、今までにないスキルも身につけることができます。研究は薬剤師としての論理的思考力や説明力を育ててくれる貴重な経験です。
5年生
実習と就職活動で自分の将来像を描こう 5年生になると、病院や薬局での長期「実務実習」が始まります。実際の患者さんや医療スタッフと関わることで、薬剤師としての自分を実感できる時期です。
調剤、服薬指導、在宅医療、高齢者への薬の提案など、多くの経験を通して「現場で求められる力」を学びます。「薬は患者さんの生活にどう関わっているのか」を体感することで、勉強への姿勢も変わります。
この時期は、就職活動も本格化します。病院、薬局、製薬会社、CRO(治験関連業務)など、自分に合った進路を探しましょう。インターンや職場見学で現場を知ることで、納得のいく進路選択につながります。
6年生
国家試験に向けて総仕上げ!薬剤師としての第一歩を踏み出す 6年生はいよいよ「薬剤師国家試験」に向けてのラストスパートです。これまでの6年間の学びを総復習し、本番に備えましょう。
試験では、知識だけでなく実践的な判断力も問われます。模擬試験や演習問題を活用しながら、確実に力をつけていくことが大切です。
また、卒業研究の最終発表や卒業試験も重なり、時間の使い方がカギになります。疲れたときはしっかり休み、気持ちを切り替えながら取り組みましょう。
国家試験合格はゴールではなく、新しいスタートです。社会に出た後も、学び続ける姿勢を忘れずに、自分の成長を楽しんでいきましょう。
おわりに
薬学部の6年間は、知識と経験を積み重ねていく大切な時間です。学年ごとに学ぶ内容や目標が変わっていきますが、「なぜ学ぶのか」「将来どうなりたいのか」を意識することで、もっと前向きに取り組めるようになります。
薬学は、人の健康と命を支える大切な学問です。この記事が、薬学部を目指す皆さんの背中を押し、進路選びのヒントになることを願っています。
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